第105回  5月20日の夜

5月20日夜9時。
帰宅途中にふと夜空を見ると、南の方向にぼんやりとした月が出ていました。ここ数日忙しくて猪木の事もすっかり忘れていました。前を見たり月を見たりしながら、夜道を歩いていました。
猪木が亡くなってどれぐらい経つのか、と改めて指を折りながら考えてみました。

2022年10月1日からもうすぐ20か月。
色々あって長いのか短いのかは分かりません。
今、自分が取り組んでいる事は猪木の国民栄誉賞受賞への運動と三回忌の準備、そして「猪木ロロイド」で挑む詩集「馬鹿のひとり旅」か、と改めて思いました。
国民栄誉賞は猪木に近い人ほど他人事の様に感じます。ここでは詳しく言う事は控えますが・・・私は諦めません。この20か月、告別式やお別れの会、そしてお墓の建立や映画等、多少の私財も費やしましたが、家族の理解もあって自分自身は納得しています。

5月20日の夜。久しぶりに猪木の事を考えながら歩きました。前を見たり夜空を見たり。
ふと猪木は、国民栄誉賞や「猪木ロイド」を受け入れてくれるのか、と急に思いました。
「人間は2度死ぬ」。一度目は命が途絶えた時、その人の生涯を閉じた時です。そして、二度目はその人の事が皆から忘れられた時です。過去に有名な映画スターやアスリート等が亡くなり、その時は話題になりますが、わずか1年も経たずして誰もその人の事を語らなくなります。
何としても稀代のスーパースター「アントニオ猪木」の生き様を忘れないでほしい。次の若い世代の人にもこの男の凄さを知ってもらいたい。ただこの一心で自分は動いているのだが、果たして猪木はそれを望んでいるのか。歩く速度が少し遅くなり、改めて考えました。

猪木がたった一言「もういいよ」とか、いつもの笑顔でただ笑っているだけでもいいので反応がほしい。自分のモチベーションを消さない為にも、それを望む自分がどこかにいます。
何十分も歩いているのに、月はいつまで経っても同じ場所でぼんやりと光っていました。
切ないね。

猪木はもういません。

次回、6月1日に掲載予定です。
(「天国の猪木へ」は不定期掲載です)

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