代表取締役 湯川 剛

2021年12月1日。
この日、食パン専門店のトップリーダーである「根上」が値上げをする日でした。私自身、すっかりこの日の事を忘れていましたが、銀座に志かわ関係者が購入してきました。偶然にも、私自身が「銀座本店」にいましたので、試食する事になりました。以前、投資ファンドのⅠ代表が「値上げと同時に定番の食パンの味を変えた」と説明した事を思い出しました。しかし、元々「根上」の定番食パンをそれほど食べ比べていなかったため、正直なところ比較のしようがありませんでした。ところが、「銀座本店」の工房関係者が、前日に「根上」の従来の定番食パンを買い置きしていたとの事で、比較する事にしました。従来の定番食パンを前日に買い置きしていたという点に、「さすがやな」と感心しました。
全員が、新定番食パンの味の感想よりも「何故変えたのか」という点が話題になりました。「根上」は顔となるべき定番食パンで、今日まで食パン専門店のトップリーダーとして成長してきたので、その真意が分かりませんでした。しかも、従来の定番食パンはなくなったとの事です。それでは、これまで購入してきたお客様はどうすればよいのでしょうか。「根上」の創業以来、8年にわたるファンの方々は、納得されているのでしょうか。他社の事とはいえ、この判断の狙いが私には分かりませんでした。その時、「銀座本店」の工房関係者が表示シールを私に見せてくれました。そこには、従来の食パンは「マーガリン・練乳・バター」と記載されており、新しい食パンは「バター・練乳・マーガリン」となっていました。一見すると同じように見えますが、それは違います。前者はマーガリンが中心であり、後者はバターが中心です。いずれにしても、私たちにはわからない高度な経営判断があったのだと思います。誤解のないように伝えておきますが、決して「根上」のやり方を論評しているわけではありません。私にとっては、全てが勉強材料です。なにしろ、食パン専門店の先駆者であり、業界のトップリーダーである「根上」の動きは、5年遅れの後発である「銀座仁志川」にとって、全てが貴重な教材になります。それほど影響力のある存在でした。

さて、私たちにとっても値上げは必然的な項目です。「根上」の値上げの様子を見ながら、我々はどのタイミングで判断するかが問題でした。前回も記載しましたが、定番食パンの値上げに先立ち、私たちは「銀座に志かわ」の看板商品となる新製品を発売する事になりました。それが「あん食パン」の発売です。それまでの私は、「あんの入った食パン」と言い、正式名称である「あん食パン」と言った事がありませんでした。そこで社内で「あん食パン」という名称についてリサーチしました。女性の約8割は「あん食パン」と言いましたが、男性の約9割は、私と同じように「あんの入った食パン」と言い、正式名称を使っていません。唯一、「あん食パン」とズバリ正式名称で答えた男性社員に「よく知っているな」と確認したところ、奥さんの影響で知っていたとの事です。私が「銀座に志かわ」の二枚看板として、従来の「定番食パン」に「あん食パン」を加える事を決めたのは、別の意味もありました。同時に、日本の多くの男性にも、以前の私のように「あんの入った食パン」と言わせるのではなく、正式名称である「あん食パン」と口にしてもらうためにも、「銀座に志かわ・あん食パン」を広めたいと思いました。
私たちは、「あんパン」「メロンパン」「クロワッサン」「カレーパン」と同じように、「あん食パン」という名称の定着を「銀座に志かわ」こそがやるべきだと思いました。

では、何故「銀座に志かわ」が、従来の定番食パンに続く看板商品として、「銀座に志かわ・あん食パン」にそこまでこだわったのか。その理由は、2022年2月の出来事としてお話しします。

2021年も終わろうとしています。12月に入ると、新規感染者数は一時的に低い水準で推移していましたが、世界的にはオミクロン株の出現により、感染が再拡大し始めた時期でもありました。コロナ禍の終息はまだ見えず、2022年も先行き不透明な年の暮れでした。
その年末、加盟店様から「銀座に志かわ」の店舗を3店舗撤退するという話が出てきました。これまで出店ラッシュが続いていた「銀座に志かわ」でしたが、このあたりから「食パン専門店」業界はいよいよレッドオーシャン化が進み、2022年は波乱含みの年明けとなります。


次回、3月1日に掲載します。

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp