代表取締役 湯川 剛

11月に入りました。OSGでは、創立記念日(8月29日)と並ぶ社内の記念日があります。それは、「決起の日記念日」(11月11日)です。そのため、11月全体が「決起の月」となります。「決起の日」については、これまで何度も「人プラ」で掲載しています(第66回:11月11日 2007年9月15日掲載参照)

11月1日20時30分。私は前日に行われた第49回衆議院議員選挙の結果をテレビで見ていました。その時、株式会社銀座仁志川の髙橋社長から電話があり、「根上が12月1日に800円から900円に値上げをする」との報告がありました。そういえば、「根上」に投資ファンドが入り、その代表と数回面談をした事を思い出しました(第621回:Cキャピタルとの食事会 2025年5月20日掲載)
この時、私は後日談として「タヌキとキツネの面談だ」と幹部等に話しました。それは値上げの時期を探り合う話でした。いわゆる「銀座仁志川か根上のどちらが先に値上げするか」という腹の探り合いです。結果的には根上が先に発表し、これにより銀座仁志川がアドバンテージを得たわけです。
「値上げ」はあらゆるビジネスにおいて重要な経営判断です。
計算を単純化するために税込で説明します。例えば、800円から900円に値上げした場合、原材料がそのままであれば利益率は約12%強改善します。仮に月商300万円なら、36万円の利益改善になるわけです。これは家賃に相当します。もちろん、値上げをする理由は原材料や燃料等の高騰があるため、単純に利益が増えるというわけではありません。前回も掲載しましたが、銀座に志かわ加盟店様から提出された要望書には「原材料を下げてほしい」という内容がありました。値上げをすればこれも改善するわけです。
「値上げ」が重要な経営判断、と言ったのは、この「値上げ」により利益改善する場合もありますが、「客離れ」という逆作用が起こる場合もあります。私にとって、「根上の先行値上げ」は経営判断の材料として1つのアドバンテージを持ったようなものです。
そうこう思っているうちに、根上の投資ファンドI代表から面談依頼があり、11月17日にOSG本社にて面談しました。「タヌキとキツネの面談」です。この日の代表の話では、「根上は600店舗を目指す」との事です。また、「根上はスターバックスであり、銀座に志かわはタリーズだ」という表現もしていました。以前はプロレスの話でしたが、今回はカフェの事例でした。I代表が考える「高級食パン」市場規模は1000億との事です。農林省の発表では、当時食パン市場全体は3600億です。これはスーパー、コンビニ、街のベーカリー等が販売している「食パン」の市場です。その約30%が「高級食パン」市場だと思っているのでしょうか。100人中30人が高級食パンを食べる、との事です。私は当時、10%程度の360億はあると考えていたので、かなりの強気の見方だと思いました。1000億市場なら、600店舗も不可能ではありません。彼の話によると、イメージ的には京阪や九州JR駅前には必ず「根上」の店舗がある、との事です。加盟金は通常1000万円、首都圏では1500万円との事で、ロイヤリティは10%。私はこの話を聞きながら、「これで加盟店側は運営していけるのだろうか」と思いました。更に驚いた事に「値上げにあわせて、従来の食パンの味を変える」との事でした。
あっけらかんと私に実情を伝えている目的はなんなのかなと思いながら、いずれも他社の出来事として聞いていました。ただ、売れ残ったロスパンを翌日に50%引きで販売する、との話には他社の事であれビックリしました。もはや「高級食パン」というより、一般のベーカリーの店舗運営です。そういえば、スーパーで「根上」の食パンを販売していた事を思い出しました。確認すると、「コロナ禍」にてスーパーの卸販売を認めている、との事でした。更に、「根上」では、複数(実際の人数は聞きましたが・・・)の発売元のような会社があり、「根上」はFCビジネスではないとの事です。複数の発売元と本部が強固な関係を気付いており、どのような状況になっても「本部へ上納」の仕組みになっていると説明がありました。I代表は、新店舗を出す際にその会社が融資が受けられない場合は、地方銀行を本部から紹介する仕組みまで私に教えてくれました。私自身、この仕組みに対してとやかく言う立場ではありません。成功しているのであれば、それは素晴らしい仕組みだと思います。銀座仁志川本部には加盟店様に融資の紹介などの仕組みはありません。また、考えてもいません。

最後に、I代表が私に面談を申し込んだ目的が判明しました。
「銀座に志かわは高級ブランドのイメージがあるので、800円ではなく1000円へ値上げしてほしい」という、仰天提案でした。
私は「価格設定は経営の最高重要項目」と思っています。当然、「値上げ」は経営の重要項目です。それを競合店のI代表から言われる筋合いはありません。「銀座に志かわブランドは高級イメージがある」と言っていただいた事に感謝した上で、「根上さんも高級ブランドの路線で行っているので、12月の900円値上げを思い切って1000円にしてはどうですか」と逆提案をし、面談は終わりました。
今回の面談は、結果として「タヌキとキツネ」の面談ではありませんでしたが、不思議な時間でした。

この日の面談は、私にとって更なるアドバンデージを得る機会となりました。一方、加盟店様の経営を圧迫している原材料・燃料・資材の高騰に、値上げの必要性は待ったなしです。しかし、タイミングを間違うと逆効果になり、そのような意味で「値上げの時期」をいつにするのかについて考えさせられました。


次回、2月10日に掲載します。

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