代表取締役 湯川 剛

2021年3月。
一般社団法人・日本記念日協会より、弊社が申請していた「高級食パン文化記念月間」が正式に認定・登録されたとの連絡がありました。よく「高級食パン」と自ら言うのはおかしいのではないか、という指摘がありました。そう言えば「高級車」や「高級なレストラン」と称するのは第三者の声であり、自ら「高級車」や「高級レストラン」と名乗っているわけではありません。テレビでも、「スーパーで売られている食パンと高級食パンの違い」というフレーズはあったとしても、自ら「高級食パン」と名乗るのはおかしい、という指摘は外れていないかもしれません。
しかし、銀座に志かわでは、暖簾や紙袋に「水にこだわる高級食パン」と明記しています。それだけに、何としても日本の食文化の中で「高級食パン」のポジションを確立したかったわけです。そこで、一般社団法人・日本記念日協会に申請したところ助言をいただき、文化記念月間(4月8日から5月9日)として申請しました。
4月8日(4=食・8=パン)、5月9日(59=高級)という語呂合わせもあります。
私は、何としても「高級食パン文化記念月間」に「100店」の出店を実現したかったわけです。銀座に志かわでは、「3年で100店」出店を当初より目指していました。

実は、この「3年で100店」の基準は、食パン専門店のトップランナーである「根上」にあります。「根上」が「5年で100店」を実現し、根上経営者が「これは奇跡だ」と語ったので、それでは私たちはその「これは奇跡だ」に挑むべく「3年で100店」をやろうじゃないか、という事になりました。
以前にも掲載(第575回 72歳の誕生日は「宣戦布告日」2024年2月10日掲載)しましたが、改めて一部抜粋で掲載します。

「2号店『銀座に志かわ・船場本町店』が無事オープンしました。
早々と『完売御礼』のポスターが店頭に掲示されました。~(略)~
在阪テレビ局の情報番組がこのオープンを大々的に取り上げてくれました。内容はおそらく東京では考えられないような編集でした。お客様の声や髙橋社長のインタビュー等は普通通りの流れです。髙橋社長が『3年で100店舗出店する』と今後の展開に対する質問で明確に答えていました。在京テレビ局の取材は既に銀座本店のオープン以来、何度となく受けています。年齢より若く見える髙橋社長の爽やかな笑顔は『銀座に志かわ』の顔として、ここ大阪でも受け答えをしていました。

一連の取材が夕方の『情報番組』に放送されるという事で、私はOSG本社の7階会議室で約30人程の社員さんと共にテレビの前で待ちました。『情報番組』が流れ『銀座に志かわ』オープンの放送はかなり後の方で放送される事になりました。
お客様の声や髙橋社長のインタビューの内容を見る私は、オープン前の不安はどこにいったのか、と思うぐらい落ち着いて見ていました。テレビ画面には『銀座に志かわ・船場本町店』の店頭や店内等を映してくれていましたが、次の場面で『根上』の社長が登場しているではありませんか。アナウンサーは『銀座に志かわ』の食パンの入った紙袋を坂根社長に手渡しています。こんな場面など想像していませんでした。

アナウンサーは、なんとライバルの商品を競合店の社長に手渡し『坂根社長、銀座に志かわが本日オープンしました。東京からお膝元に進出していますよ』的な話をして、挑発するように坂根社長へマイクを向けています。私は『凄い事をするな』とテレビ局の番組進行に驚きながら、正直どうするのかなという興味もあって、画面に釘付けになっていました。
アナウンサーの質問は坂根社長を煽っているような感じです。私は『関西らしいな』とその編集に少し驚きながら見ていました。たぶん、東京のテレビ局ならこのような編集はしないと思います。逆に、もし私が坂根社長ならいい気分ではありません。少し同情しながら見ていました。多分、坂根社長は大阪では名物社長で何度もテレビに出演しているのではないでしょうか。そんな気軽さもあって、坂根社長とアナウンサーとのやり取りができたのかもしれません。坂根社長はアナウンサーの挑発に乗ったのか『うちと同じじゃないか』と答えていました。私は私でテレビを見ながら『いやいや同じではないよ』と画面に向かって言っていました。『水にこだわる高級食パン』の言葉に坂根社長は『水はどこでもこだわっている』と発言し、私はテレビに向かって『それなら何故それを打ち出さんのや』と発言のいちいちに答えていました。しかも、テレビ局のスタジオ内で食べ比べをしているではありませんか。凄いテレビ局の編集です。~(略)~

そのアナウンサーが『坂根社長、銀座に志かわの社長が3年で100店出店すると言ってますよ』とけしかけていました。すると坂根社長は『3年で100店なんて甘い。うちですら5年で100店舗。やれるものならやってみろ』的な発言をしました。
社員さんと一緒に見ていた私は、テレビ画面に向かって『公共の電波で他社の出店計画を揶揄するとはどういう事だ!』と少し笑いながら言いました。勿論、これは一緒に見ていた社員さんに向かって鼓舞する為に言ったのですが、当然の事ながらむしろ私自身に向かって言っていました。この発言を利用して、強く胸に刻もうと思いました。」

何としても「高級食パン文化記念月間」に100店目を実現すべく、銀座に志かわは直営店3店舗の白金台店・三田慶応大前店・築地店を準備を進めていました。既に98店目までは決まっていました。私たちは「3年で100店」を3年を待たずに実現したい、という気持ちが高まっていました。問題はどの店を100店目にするか、で議論がありました。即ち、99店目・100店目・101店目の候補です。100店目を白金台店にするのか、それとも三田慶応大前店・築地店にするのか。逆に言えば、100店目に大手を掛ける99店目はどこなのか。また、大きな区切りである100店目の次の新たな出発となる101店目はどこなのか、について議論しました。

いずれにしても、「3年で100店」を「2年4か月」で実現できる事は「銀座に志かわ」らしい、と出店計画のそもそもの本質である「市場で判断する」という大きな間違いをこの時点では気が付いていませんでした。

次回、9月10日に掲載します。

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