代表取締役 湯川 剛

さて、話を低周波治療器に戻します。
A社の地域代理店である西山社長に発注の報告をする度に、ニコニコと喜ばれるその笑顔が、私にとっても嬉しくて「もっと頑張ります」と張り切ったものです。製品はA社から直接送られてきました。その関係からか、A社は私達の会社の存在を知ったのでしょう。
ある日、A社から「直接取引きしないか」との話がありました。すなわち西山社長を通さずに取引すれば、今よりは安くて仕入れられるとの話でした。仕入単価が安くなるよりそのA社の商道徳観のなさに、私は驚きました。当然、その行為を私は西山社長に伝えました。話を聞くと、これまでにも何度かの被害があったらしいです。
その事がきっかけで1ヵ月後に西山社長がA社S製品の地域代理店を辞め、自社で製品を作る考えのある事を私に告げられました。私は驚きました。ルール違反のA社ですが、それなりの知名度もあり数ヶ月といえどもS製品を売っていた関係から、急に変更する事に戸惑いもありました。A社は相変わらず、「直取引をすれば今よりグンと仕入れ値が安くなる」と迫って来ました。多少、西山社長の離脱の情報も掴んでいたのでしょう。単価が安くなる事にそれ程の魅力を感じなかったのは、そのビジネスのやり方に不信があったからです。
西山社長はそれなりの決断をされたのですが「湯川さんの協力がなければ、自社製品の製造は断念せざるを得ない」と言われ、迷いに迷いました。まさか西山社長がA社代理店を辞められるなど、想定していなかったからです。

そんな時、西山社長が私に1つの提案を出されました。
「ウチの代理店にならなくてもいい。湯川さんのオリジナル製品として、OEM提供させてもらえれば良い」との事でした。今ひとつ、事態が呑み込めないので質問をすると、西山社長も委託製造をするが金型などの償却の関係もあり、一緒にやればそれだけ助かるとの事でした。当然、製品は西山社長から仕入れる事として、とにかく「自社製品」として売り出せるという事でした。「そうか、自分でその製品と知名度を売り出すという事か!!」そこに私は大変な魅力を感じました。「よし、やろう」と心に決めて社員さん達に伝えました。多分、私と同じように喜んでくれると思っていましたので、楽観的になっていましたが、社員さん達の考え方は違っていました。
「湯川社長、自分達はまずは売れる事です。何も売れにくい知名度のない製品をわざわざ自分達で作るより、現在知名度のある商品を売った方がずっとやり易い」ともっともな意見でした。
社長と社員という立場の違いがあると言えど、全く正反対な考え方に戸惑いました。

(次回に続く)

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