代表取締役 湯川 剛

臨時株主総会を翌日に控え、6月13日は長い1日でした。この日も株主を説得する為、朝から東京在住の株主を訪ね、午後から名古屋に飛び、夜に東京に戻り、前回登場の新丸の内弁護士事務所(仮名)との打ち合わせになった訳です。圧倒的株主が多い猪木サイドに大逆転の妙手や奇手は皆無に等しい訳です。
ただ、新丸の内先生の「僅かなミスを見逃さない」のアドバイスだけが、帰りのエレベータの中で繰り返し反復していました。具体的な対応からは程遠い「僅かなミスを見逃さない」というアドバイスでしたが、逆に言えば、それしか言いようのない状況だったのでしょう。私自身は「僅かなミスを見逃さない」のアドバイスを軽く受け止めていませんでした。「僅かなミス」とは、どういうことか。
相手が起こすかもしれないミスに頼る等、これ程、あてに出来ないものはありません。
しかし、勝機はそれしかない訳です。
床に就いた私は当然、眠る事はありませんでした。むしろ頭の中であらゆるシミュレーションをしていました。ある状況が浮かんできました。「これしかないか」と万分の1の確率である「相手のミス」に賭けてみようと思いました。しかしそれはむしろ「神頼み」に近い気持ちだったと思います。今頃、相手側は勝利を確信し酒盛りをしているのか、それとも明日に備え、夢の中にいるのかと思うと、逆に燃えてきました。

翌朝、私は殆ど寝ていないまま臨時株主総会になる会場に行きました。
いよいよ「運命の日」です。
私は会場に入り、昨夜から考えているシミュレーションをリアルな会場でもう一度考えました。その結果、受付と会場の一部変更を指示しました。
新丸の内弁護士先生の「僅かなミスを見逃さない」という言葉で考え抜いた結果です。

定刻通り「臨時株主総会」が始まりました。

詳細な経緯を説明する事はここでは控えますが、結果だけお知らせします。
そうです。奇跡が起こったのです。
相手側の「僅かなミス」が引き起こした事を見逃す事無く臨時株主総会が進行しました。その結果、圧倒的株式数を持ちながら「全役員解任」が否決されました。
猪木サイドは「唖然」とした様子でしたがやむを得ません。自ら犯したミスです。

彼らが株主総会会場から去った後、私は思わず「神様ありがとうございます」と叫びました。久しぶりの感情の高ぶりです。瞬間的な時間でしたが、何ものにも代え難い感情でした。特に前日は一睡もしていない事が影響しているのかもしれません。勿論、勝利感などは一切ありません。ただ、一瞬の緊張から解放されただけの感情でした。
もし「僅かなミスを見逃さない」という言葉がなければ、このような状況になっていなかったと思います。猪木サイドに立って考えてみました。圧倒的株主を持っているという心のゆるみが、高慢となり、その事が引き寄せた「僅かなミス」に改めてこのような状況を作るのだという教訓にもなりました。
この日の日記に、『とにかく終わった。長い1日であった。神様から頂いた時間を活かす為、明日からもう一度、株主対策をやろう』としか書いてありません。それほど、疲れていたと思います。

後日、当然の事ながら猪木サイドは次なる「臨時株主総会」の開催を要求してきました。
次の株主総会は、8月7日です。
前回と同じミスを犯す事無く挑んでくる訳です。猪木サイドの代理人である弁護士事務所も、それなりの準備でくるでしょう。株主数は前回同様、圧倒的に猪木サイド側に有利である事は変わりません。

どうすればいいのか。50日後は、どうなっているのか。

(次回に続く)

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