代表取締役 湯川 剛

4月20日、私は羽田から北京に飛びました。中国での行動も「密着取材」したいとの事です。用件よりも撮影が優先される訳ですが、全く用件もなく訪問する訳にもいきません。
中国保健協会や中国国家体育局にも事前に説明をし、カメラ撮影の許可を貰いました。
実際に訪問すると保健協会も体育局も久しぶりの面談だった為、話が弾みました。主な話題は「中国での格闘技」についてです。特に国家体育局からは過去、現役引退後のオリンピック選手の就職先について相談されたことがあります。プロレスを提案したのも、そんな中国国家体育局からの相談がきっかけでした。

翌21日、天安門広場にて中国人初のプロレスラー王彬選手との撮影があり、この時に小さな事件が起こりました。私と王彬選手が天安門広場を歩いているところを撮影していると、公安の腕章をつけた3名の係員が「何を撮影しているのか」と質問されました。中国語がわからない私でも、その雰囲気がただ事ではない事を理解出来ました。

私は北京に行くと、時間があれば必ず天安門広場に行きます。勿論、仕事外の時間ですので早朝か夜のウォーキングを兼ねてです。日本のテレビニュースで中国情報が流れる場面でよく目にするあの建国の父、毛沢東の写真が飾ってある場所です。
それにしても公安当局からいわゆる「職務質問」を受けたのは初めての経験でした。
その中の一人が無線機で何かをしゃべっていました。そういうすると更に私服の公安らしき数名に囲まれ、私にも質問をしていましたが言葉は通じません。
撮影をしていた事が問題だったのか。事前の申請がなければ撮影禁止地域だったのか。
しかし一般の人達も撮影はしています。私も何度かスマホで撮影をした事がありますが一度も注意されたことはありません。

2メートル近い王彬選手と人相の良くない私がやはり問題だったのでしょうか。(笑)
サヤ氏と公安とのやり取りで言葉はわからなくとも「カメラを渡せ!」「渡さない」の押し問答が繰り返されているようでした。最終的にカメラを没収される事はありませんでしたが、撮影したものは「すべて消去しろ!」と言われたらしいです。当然、撮影をしていたサヤ氏は憮然としていましたが、彼らが去った後にサヤ氏は「映像を消しても、復元出来る事を彼らは知らない」と得意げに言っていました。
この小さな事件のおかげで天安門広場の滞在予定時間をかなりオーバーしました。

こうして私の中国での行動に対する密着取材は、欧愛水基の取引先や国家体育局等の公的機関の訪問等々、5月いっぱいまでかかりました。

サヤ氏から「湯川会長の中国と日本の日常行動を撮影したい」との申し出で始まったこの企画に対し、撮影されながら改めて「OSGにおいても記録として残る事はそれなりに価値がある事」と感じていました。というのは、OSGの幹部の人達含め、殆どの社員さんが私の日常の行動を知らない訳です。当然といえば当然の事。今回のサヤ氏の企画がなければ、このような機会はなかった筈です。
例えば、私が毎月お墓参りしている事は一部の幹部の人は知っていますが、実際にはどのようにお墓参りをしているかまでは知りません。以前、墓地まで送迎してくれた社員さんが私の後をついてきて、「私が運びます」と水の入った桶を運ぶのを手伝おうとしてくれた事に驚きました。「これはプライベートな事だから、車に戻って下さい」と社員さんの心遣いに感謝しながら断りました。以降、私がお墓参りをする時は車中で待機して貰っています。
そのような場面も映像として記録されています。
毎月、役員と参拝する信貴山での場面は、幹部の殆どの人が知っていますが、それも一部の役員で殆どの社員さんは知りません。私が実姉を世話する事など知らせる必要はありませんが、会社の社員さんやその家族の方々の健康を祈る場面は何か意味があるかなと思いました。
ここ10年ほど、車の運転から遠ざかっていますが、40年以上、ひとり車で信貴山を訪れ「社員さん及び家族の皆様への健康や無事故への祈り」の時間を積み重ねてきた事は、少なからず会社の文化に影響を与えているならば、そのような場面は社員の皆さんに伝えておく必要があるかもしれないと改めて密着取材を受けながら感じました。

今回、このような機会を与えてくれたサヤ氏には感謝をしています。
中国人である彼の目から見た日本人経営者はどう映ったのでしょうか。後から聞いたところによると中国人でこれほどまで動く経営者はいないし、むしろ、理解できないとの事でした。

撮影を終えて「密着取材」もすっかり忘れていた翌年4月にサヤ氏から連絡が入りました。
「2017年度中国媒体広告学院IAI国際広告研究所主催のベストドキュメント部門でゴールド賞を受賞しました」との事でした。
私自身はその映像を見ていませんが、サヤ氏には「よかった!」とお祝いを伝えました。

2017年5月17日、北京での授賞式の式典に参加するように言われ訪中。会場には日本から電通や博報堂なども参加していました。
私はてっきりこの日に会場で映像が流れるものだと期待していたのですが、記念楯等の授賞式だけでした。私は「中国媒体広告学院IAI国際広告研究所主催」がどのような価値があるのか分かりませんが、何か第三者から評価を受けた事は素直に嬉しかったです。

私はサヤ氏から全く知らされていなかったので、映像のタイトルを尋ねてみました。
「ある日本人経営者の日常生活」的なタイトルなのかな・・・と勝手に想像していましたが、タイトルは「堅行」だと告げられました。
「堅行」ってどのような意味なのかを尋ねたところ、「どんなことがあっても諦めずに行く」と説明されました。「堅行」の意味を知り、素直に私は嬉しかったです。タイトルが非常に気に入りました。勿論、私が受賞したわけではありませんが中国人の方にはどのように映ったのでしょうか。

授賞式の帰りに、普通の中国の食堂に入りました。
そして中国ビールで「辛苦了」(シンクラー)「ご苦労様でした」と乾杯しました。

(次回に続く)

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp