代表取締役 湯川 剛

弁護士から新聞社に掛け合って貰っておよそ10日後、ようやく担当記者から連絡が入りました。名前はO氏と言いました。

「自分が書いた記事で迷惑をかけてしまい、申し訳ないと思っている。」
彼はそう謝罪の言葉を口にしました。しかし、どうしてこんな嘘の記事を載せることになったのか。私が知りたかった肝心な点については、頑として話そうとしません。どこでそんな話を聞いたのかについても、ニュースソースを明かす事は出来ないと言うのみです。
「何を言ってるんだ。こっちはおたくの記事で迷惑しているんだぞ!」
それでも「申し訳ない、申し訳ない」と繰り返すばかり。何を聞いても埒が明かない状況でした。結局は訂正文を掲載する事で折れるしかありませんでした。
実際に掲載された訂正文は社会面の隅に数行だけ。内容も「見出しにあったインチキ器具は浄水器と呼ばれるものでした」というもので、到底、当社に貼られたレッテルをはがしてくれるものではなかったのです。
売上は以前と比べて半分以下に落ち込みました。販売店様を訪問し、誤解を解いてもらえるよう頭を下げて回る、そんな日々が1ヶ月以上続きました。
裁判に訴えようかとも考えましたが、社名が出ていない限り、勝ち目はなく、もはやなす術がありません。そうするうちに会社に見切りをつけて辞めていく社員も出てきました。1人、2人と退職者が続くのです。2ヶ月程すると、社員は半分になってしまっていました。

「心配するな、うちは何も悪い事はしていないんだから、そのうち事態は好転する。それまでドンと構えていろよ」
そうは言っても事態が好転する見込み等、全くありません。社員に不安を抱かせてはいけないと、会社の中では虚勢を張っていましたが、1人になると言い知れぬ不安に襲われました。
食事が喉を通らない。眠れない夜が続きました。
どうして自分だけがこんな目に遭うのだろうか。いくら考えても原因が分かりません。
この時、私は自分に襲い掛かってくる不幸な境遇を呪いました。

(次回に続く)

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