代表取締役 湯川 剛

「1976年4月25日、仕事の鬼になる」と決意を固め、29歳という若さに身を任せ、私自身も24時間フル稼動で働きました。
その年の5月の終わり頃、会社で植木鉢を移動させようと持ったところ、ギクッと腰を痛めました。会社設立来、殆ど休日もなく走り続けてきた事も災いしたのでしょう。現在、経理部門を統括する取締役部長の藤沢さんに救急車を呼んでもらい、今も東大阪にある牧野病院に運ばれました。病院で担当医は私の症状を診て「3ヶ月は入院が必要」と診断。付いて来てくれた藤沢さんに「必ず1週間後に退院する」と言い、この機会にと「机の横に読んでいない本が3冊ある。聞いていない教材テープが1セットあるので持って来て欲しい。」と依頼しました。患部の腰は固定されていますが、目と手は動かす事が出来ます。この数ヶ月は本を読む余裕など全くありませんでしたので、「これはただの療養時間ではない。神様が勉強の時間を与えて下さったのだ」と解釈したのです。医者の診察をよそに「1週間で退院する」と言った私でしたが、結果的には2週間で退院出来ました。入院中は本やテープからも勿論学びましたが、それ以外に「病室」でも多くの事を学びました。その中には非常に考えさせられるものがありました。

救急病院なので1日に何台も救急車がサイレンを鳴らして入ってきます。私は8人の相部屋に入っていましたが、同室の方の中に長く療養されている患者さんがいました。この方は救急車が入ってくる度に「オレより重症であればいいのに・・・」と、周囲にも聞こえるように言うのです。入院当時はその発言を冗談で聞き、1週間後には嫌悪感で聞き、退院する頃には悲しい気持ちで聞きました。人間の本性みたいなものをこの患者さんに見たのです。自分よりも遅く入院してきた者が、自分より先に次々と退院していく。これはどんな気持ちだろう。長期入院患者の気持ちを考えました。

退院後、この事について社員さんに話をしました。そして結論はやはり「オレより重症であればいいのに」発言は否定すべきものであり、むしろ早く退院する人に心から祝福する気持ちがなければ益々病気は良くならないのではないかという事になりました。同時に元気に働けることの幸せをこの2週間の入院で更に確認し、まさに馬車馬の如く働きました。何せ「鬼になる」と宣言したのですから・・・。

(次回に続く)

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