代表取締役 湯川 剛

天然社の約300の代理店に横やりを入れる金鋭氏に、天然本社も神経質になっていました。もしかすれば欧愛水基のアルカリイオン整水器も金鋭氏に寝返るのではないかと判断したのでしょうか。天然社が欧愛水基に対して考えられないような行為をしました。

欧愛水基は天然本社と金鋭氏に対しては明確なスタンスを取っていました。金鋭氏に対しては中国進出のきっかけを作ってくれた恩義ある人です。しかしながら欧愛水基の発売元となった天然本社を退社し(事前の相談もなく突然の出来事)、それ以降はあくまでも個人的な関係で「兄弟」と呼び合う仲でも、事業とは完全に区別していました。
天然本社に対しては当然、契約書に基づいての発売元として関係を維持していました。その天然本社が創業者であった金鋭氏が抜けた事により、大黒柱不在の本社と全国300社の代理店との関係が従来のように親密でない事に危惧していましたが、製造元と総発売元の関係は維持していました。それにしても05年に発生した「第2次 衛生部ショック」の激震は思わぬ副作用や想定外の状況を次々と引き起こしている訳です。当然の事ながら欧愛水基にも少なからず影響を与えていました。

さて金鋭氏の会社が中国産メーカーのアルカリイオン整水器を代理店に売り込んでいる事を知った時はさすがに個人の関係と仕事とは区別しているとはいえ、驚きました。よくよく考えてみれば天然本社が取り扱っている製品を全て金鋭氏の会社が取り揃えるという方針ならば理解できない事はないのですが、まさかの出来事でした。
当然、私は「金兄弟、どういう事なんだ」と彼に詰め寄りました。
すると彼の回答は「まさか私が欧愛水基の製品を天然社と取引を中止して私と取引して欲しいとは言えない。私の心は欧愛水基の製品は私が日本から中国に持ってきたという自負がある。だから私の手で本来は欧愛水基の製品を販売したい。しかしそれを言えば湯川兄弟は悩むだろう」との事でした。

この言葉に私は唸りました。だからと言って、中国メーカーのアルカリイオン整水器を天然の代理店に売り込まなくてもいいではないかと言いましたが、そこは個人的な関係と仕事を区別している私にとっても、どこかでそれは認めなくてはならないと思いました。
ただ、金鋭氏は「心配しなくてもいい。我社の中国メーカーは売れない。現実に売れてはいない。代理店はアルカリイオン整水器は欧愛水基だと思っている」と悩んでいる私に慰めとも言えないような言葉でその場を収め「久しぶりだから食事でもしましょう」となる訳です。実際のところ現場では殆ど影響はありませんでしたが、ただ1か所だけこの現象を真剣に考えていたところがある訳です。それが天然本社でした。

ファンド出身である天然本社の董事長は今一つの動きの鈍い代理店に「価格で勝負しなければ金鋭氏にアルカリイオン整水器の市場を取られてしまう」と、天然本社が従来より取引していた中国産アルカリイオン整水器の価格を下げて代理店に卸しました。当然の事ながら欧愛水基の製品の動きは更に悪化します。欧愛水基は契約通りに製品を引き取るように詰め寄りますが「その契約は前董事長の金鋭との約束で、毎月引き取る事は出来ない」と不誠実な回答をしてきました。当時、天然本社との製品を仮に「A-50」としましょう。この「A-50」に対しては、欧愛水基は天然本社以外に販売する事は出来ない事になっています。
天然本社の関係者が「内密の話だが・・・」として欧愛水基への取引に対して2つの理由があると打ち明けられました。1つは金鋭氏と私との関係です。もしかすれば金鋭氏を通じて裏取引をするのではないかと疑っているとの事。もう1つはやはり金鋭氏が安価な中国産アルカリイオン整水器を販売しているので、これに対抗する為、天然本社も中国産アルカリイオン整水器に力を入れるので、欧愛水基の製品は二の次になるとの事でした。

03年に中国に輸出し、04年に中国現地法人欧愛水基を設立。全国300社の天然本社の代理店を通じて順調すぎる販売拡大。しかしその期間もわずか1年半。好事魔多しの例え通り05年秋に「衛生部ショック」を発端にその副作用が欧愛水基を禍の中に入っていく訳です。天然本社が発売元としての契約を基に出荷をコントロールし、二進も三進も行かない八方ふさがりの状態に陥りました。

さぁ、この危機を欧愛水基は脱出できるのか。この先、どのような展開になるのか。

【追記】
本日は令和元年(2019年)5月31日です。
夕刻に嬉しいニュースが飛び込んできました。

ご承知のように来年8月に創立50周年を迎えます。この記念事業として映画「セカイイチオイシイ水」を制作しているお話は以前にもお知らせしていると思います。
49年前の1970年8月。貸室5坪、私を含めて5人からスタートしたOSGがここまでこれたのは社員さんやお客様の存在抜きにしては考えられません。この感謝の気持ちを何か形に残るものとして考えたのが映画製作です。
国境を越え、過去を乗り越え、パイプラインがつないだ友情の絆。成功を信じて水道建設プロジェクトに挑んだ人々の日本とフィリピンの感動の実話です。
「きれいな水を届けたい」という実話を基にした映画「セカイイチオイシイ水」は、私財で制作しました。今秋に劇場公開する予定です。
その映画の舞台であるフィリピンでの「フィリピン日本映画祭」に出展する事が決まったとの報告が「人プラ(人生はプラス思考で歩きましょう!)」の6月1日付第398回を書き終えた時に入ってきました。
フィリピン日本映画祭は、昨年もカンヌ映画祭出展作品で話題作となった是枝監督も出品しているとの事です。詳しい事は後日分かり次第、報告します。

(次回に続く)

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