代表取締役 湯川 剛

03年春に中国にOSG製品を輸出し、04年春に現地法人を設立。そして05年春に待望の工場が完成。不具合等の問題もありましたが、このままの伸び率でいくと中国進出から3~4年で出資額も回収でき、5~6年も経てばOSGグループの売上の50%の影響を与える収益事業になるのではないか。しかし「好事魔多し」。絶頂な時ほど緊張が走ります。
そんな矢先の2005年7月21日、中国から私の携帯電話に1本の電話が入りました。

「社長、大変な事が起こりました。今、天然本社から連絡があり、中国政府はアルカリイオン整水器の業界指導に入り、製造・販売を中止するという事です」
私は中国駐在の社員さんの慌てているような早口に、改めて聞き直しました。
しかし2度目の内容も同じでした。

これが後々語られる「衛生部ショック」を知らせる第一声です。

当時「アクアCは必ずOSGを切る」という予想外の展開に、水宅配ビジネスの計画を見直さなければならないと思っていた矢先の出来事です。
「中国政府によるアルカリイオン整水器の業界指導実施に伴い、製造並びに販売を中止せざるを得ない」とこれまた予想外の話。これは中国進出の根本を覆す事であり、それでなくともアクアC問題で脱線しそうな私の思考回路に追い討ちをかけるかのように、更に激震的な問題を突きつけられて、頭の中はまるで急転直下のジェットコースターのようでした。

急遽、上海に飛ぼうと思いましたが、どうしても外せないスケジュールがあり、7月26日、関空発 上海行きのチケットを取りました。
前日の7月25日は日本三大祭りの天神祭り。OSG本社では、天神祭りの花火大会が本社ビル10階から見える為、毎年お客様をご招待しています。同時に翌年入社予定である学生さん達の内定者懇親会も行なわれ、加えて別の階では種田社長とミネラル原液のプラントについての重要な会議も行なわれました。
不思議な事にアクアCや中国政府の重大問題を抱え「前門の虎、後門の狼」状態にも関わらず、当時の日記では一切触れられてはおらず、花火大会に参加されたお客様の様子や内定者学生、そして種田社長の事しか書いていません。
勿論、そこにいたOSG幹部にも中国政府の「衛生部ショック」問題に関しては一切知らせていませんでした。

7月26日、関空09:05発、上海11:55着。
上海空港到着後、空港内で製造責任者と打ち合わせを行ない、私は金菫事長に会う為に上海16:40発 済南18:05着便に搭乗。この日は、天然本社が毎年7月、中国名山に全国の代理店約300社を集めて行なわれる研修があり、05年は泰山でした。
毎年1年前からの準備をしているのですが、今回は何としたタイミングか。
7月21日の中国衛生部ショックの発表から1週間後の代理店研修でしたので、当然の事ながら研修会ではこの問題が大きく取上げられました。
私は26日夜遅くに天然本社の金菫事長や幹部に「中国当局が製造中止という指示が本当なら、天然の見解を聞かせて欲しい。私は中国人でないのでまずは皆さん方の考えを知りたい。本来、私はこの研修に参加する予定ではなかったので、この後、すぐに呉江工場に戻り、この事態に対して不安がっている社員さん達に説明する為、すぐに上海に戻りたい」と伝えました。
真夜中の会議ではこれといった結論は出ませんでした。

翌27日の朝、私は研修会予定の中で1時間、時間を貰いました。
全国代理店約300社のオーナー達を前に、私は自分の気持ちを述べました。
「日本においてアルカリイオン整水器は、医療機器として認証を受けた製品です。中国政府が何をもって業界指導に入り、何を理由に製造・販売を中止したのか、現段階では分かりません。よってまず私は中国政府当局に面談を要求したいと思います。皆さんも正しい情報を得るまでは必要以上の不安は持たないで下さい。今、私が皆さんの前ではっきり言える事は、決して私はこの問題から逃げないという事です。問題があれば解決します。誤解があれば解きます。私は逃げない!」
そう伝えて、すぐに泰山から済南・上海を経て呉江へと引き返しました。呉江のホテルに着いた時には既に夜中の零時を過ぎていました。

(次回に続く)

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