代表取締役 湯川 剛

オムコ社は業界最大手と評価される程、他社を圧倒する素晴らしい技術があり、また電解機能水の開発力をも併せ持つ企業で、産業用・業務用・家庭用市場をカバーする製品群や、特許等の知的財産も多数ある魅力的な会社です。

それを裏付けするようにオムコ社の製品は、オムコ社の技術力・開発力を認める多くの大手飲料メーカーや知名度のある病院・有名レストラン・一流ホテルなどで採用されていました。

素晴らしい技術者や素晴らしい営業マンがいて、そして優秀な販売代理店がいた訳です。
にもかかわらず、なぜこんな状況になったのか。経営はまさに、それだけでは成り立たないという事を実証しているような、今回の出来事です。

さて事前に約束をしていた12月27日、OSG本社にオムコの主な販売店・代理店が集まりました。
3日前の出来事を考えれば既に私の心はSTOPにスイッチが入りかけていた状態で、そんな中、販売店・代理店の社長らとのオムコ販売店・代理店会議が開かれました。
殆どの社長とは初対面です。

彼らからは「是非ともOSGが引受けて欲しい」と口々に懇願されました。今までオムコブランドを信じ、オムコブランドにプライドを持ってオムコ製品を売ってきた訳です。今後の製品供給は勿論の事、メンテナンスや部品提供もされなくなる状況を考えると、何とかOSGでオムコ再建が出来ないか、との発言が次々と出ました。
しかし、懇願する彼らに対して私は、部品提供する協力関係者の協力なしに生産は不可能である事、そして12月24日の状況を説明しました。

「残念ながらOSGは協力できない」
私の説明に、彼らは一様に顔色を失いました。
いくらOSGが協力したくても、肝心の部品提供業者の協力を得られなければどうにもならないという事は理解しつつも、それでも「何とかならないのか」という声が寄せられました。
そこで私は「もし部品提供業者がOKであれば、勿論私は立ち上がる予定だ。」と言いましたが、正直なところなかなか難しい状況だと思いました。

その場にいた参加者は皆、声もなく不安な顔つきで私を見ていました。
無理もありません。オムコというブランドを信じ、お客様もいるのです。
それぞれに生活があるのです。多くの負債を課せられた出入り業者の皆さんだけが問題を抱えるのではなく、販売される人達にもこれからの多くの問題を抱えるのです。
改めて会社を潰すということは、多くの不幸を生む事になるという事を目の当たりにしました。

翌日の28日は、OSGの仕事納めと恒例の忘年会でした。例年通り1年間のねぎらいをし、大いに飲み、大いに語り合い、大いに笑い、その場面を見ながら毎年このような忘年会を開催できる事の幸せと責任感をしみじみ感じていました。
4日前にあったオムコ社員の人たちはどうしているのだろうか。負債を抱えた出入り業者の社員さん達はどうしているのだろうか。前日にあった代理店の社員さん達はこの暮れをどう過ごしているのだろうか。忘年会は出来たのであろうか。

この15日間の私の行動は、一部の幹部だけが知るところで、私の目の前にいる笑顔の社員さん達は一切知らない話です。私もこの10日余りの出来事を忘れるような気持ちで皆と呑み、3日後に来る新しい年に気持ちを馳せていました。

社員さんによる「来年も頑張りましょう」の明るい声と元気な声の三本締めを後にして、帰路に着きました。

1999年もあと3日で終わろうとする頃。まさにもうすぐ29日に日付が変わろうかという時刻に1本の電話がかかってきました。

 

【追記】
尖閣諸島を日本が「国有化」を発表したところから、日中問題は大きな混乱に陥りました。
そんな状況下で私は、17日から22日にかけて中国:北京・南京・上海に出張していました。
14日から中国全土にデモが広がり、特に北京の日本大使館には数万人のデモがありました。
青島では日系スーパーや日系工場が焼き払われ大変な騒ぎでしたが、そんな中での出張でした。
私が17日に北京に行った用件は、政府要人との面談でした。13日(木)には既に全ての政府関係者に対して日本の企業及び団体とは交流してはならないとの通達が出ていました。
当然、政府要人とは面談が出来ないが、私は断られても良いので北京に飛びました。

結果的には次の指示があり、面談が実現しました。
個室において日本語を交わしてはいけない。
つまり日本人と会うという状況を作ってはいけないという事です。
約束の時間には敢えて1時間遅れていく。
これは「料理が全部出揃ってホテル従業員が個室から出た頃合いを見計らって」という事です。
そんな規制の中で面談が実現したのです。

現地は、日本で報道している以上に大変な状況です。
中国で仕事をし、多くの友人がいる私にとっては大変悲しい出来事です。
日中友好40周年の記念に新たな見直しを両国は求められているのかも知れません。

(次回に続く)

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