代表取締役 湯川 剛

私の1999年12月20日(月)の日記に「GOか、STOPか」と赤い文字で書かれてあります。

オムコ社は、引受けがほぼ決まっていたという大手家電メーカー系S社との交渉を断念。交渉の舵をOSGに切り替えたオムコ社に対して私は、17日にオムコ支店長会議の開催をお願いしました。
本来であれば経営者との交渉を行なうところですが、経営者が隠れて出てこないといった状況であった為、現場を把握している支店長の声を聞きたいと私は思ったのです。
「現場が全てを語る。」の認識の元で、何故、倒産したのかの原因を掴みたかったからです。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」は、野村克也氏が監督時代によく使われた言葉ですが、まさに負けに不思議の負けなしで、倒産は倒産すべくして倒産する事が彼らの話の中から分かりました。

実は私の机には、「倒産の道/3つのバランスの崩壊」とマジックで手書きの紙が貼ってあります。倒産には、ほぼ以下のアンバランスが影響するという事です。

  1. 市場を超えた事業の拡大
  2. 指導力を超えた組織の拡大
  3. 資金計画を超えた投資の拡大

すなわち経営のバランスが崩壊した時に倒産の道を歩む事になるのです。

私は「倒産」という文字に対して多分、一般の人以上に敏感に感じるところがあります。

16歳頃からの私の夢は、建築設計士になる事でした。
しかし高校卒業間近に父親の会社が倒産した為に進学を断念し、18歳で父親の借金を抱え、全く畑違いの道を選ぶ状況に展開していく訳です。結果的にはその経験全てが良かったと今では感謝していますが、やはり「倒産」というものは多くの不幸を生むのです。
ですから私は常にこの「倒産の道/3つのバランスの崩壊」を戒めて経営をしています。
しかし、@市場を超えた事業の拡大 A指導力を超えた組織の拡大 B資金計画を超えた投資の拡大を余り考えすぎると事業の拡大も出来ないし、組織の拡大もできず、ましてや投資をしない限り会社は生き物でありジリ貧になる可能性もある訳です。
そこが教科書では教えられない経営の妙があるのですが、とりあえず今回の倒産の原因を私なりに考えてみれば、3つのアンバランスが倒産の原因であることは間違いありません。

他社の事を対岸の火事と思わず改めて倒産は罪悪だと緊張な思いをしました。
多くの社員を路頭に迷わせ、多くの出入業者の方に迷惑をかけ、また何よりも製品を使っている人達にまで不安を与える事などは、耐えられない出来事です。
支店長会議をして、「幹部にも問題はある」とつくづく思いました。悪くなる原因の全てが他人事であり、そして「つぶれるかもしれないが、本当につぶれるとは思ってもいなかった」という鈍感さがありました。

きっと自分の父親の会社も当時、そんな状況であったのではないかと思いました。
また改めて我が社を倒産させてはいけない、またそのような幹部を作ってはいけないと強く認識しながら、支店長会議で私は彼らに言いました。
「やるなら早い対応をしなければ全てが陳腐化する」
すなわち優秀な社員が離れる、代理店が離れるという事です。そして「3つの協力」を要求し、その1つでも欠けると再建は難しいと告げました。

「GOか、STOPか!」と書いたのは、その3日後である20日の事です。
支店長会議明けの土曜・日曜日の18・19日の2日間がカギとなりました。

(次回に続く)

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp