代表取締役 湯川 剛

1999年10月5日。快晴の中、アルカリイオン整水器「ヒューマンウォーター」のCM撮影が兵庫県三田の山中で行なわれていました。アントニオ猪木さんと子供が自然に触れる風景のCMシーンでした。そんな秋空のすがすがしい季節の中での撮影に私も立ち会っていました。撮影中に携帯電話が鳴り、慌てて小声で話をしました。奥深い山の中なのか、会話がスムーズに聞き取れず、撮影中なので大声を出す事も出来ません。
しかし私は最後に大きな声を出してしまい、撮影が中断しました。

「なに、オムコ社が倒産したって!」
オムコ社とは、アルカリイオン整水器業界において最大手の企業でした。直接の取引はなかったのですが、オムコ社の代理店を通じてお客様の要望があれば仕入れる程度で、オムコ社から見れば、孫代理店のようなものです。私自身は一度もオムコ社の幹部は勿論、社員すら面識はありません。全て代理店を通じての関係です。ただオムコ社は業界最大手である事は知っていました。まさか倒産するとはゆめゆめおもっていませんでした。
「はい、そうです。それでオムコ社の代理店が是非、湯川社長にあって相談したい、との事です。」が、電話の内容でした。

翌週にその代理店社長と会い、話の内容を聞くと「このままオムコ社が倒産から消滅になれば今まで設置していたユーザー様にご迷惑がかかる。そこでこのオムコ社の事業を湯川社長が引き受けて欲しい。」との事でした。
このような話で毎回考えさせられる事は、会社は社長だけのものでもなければ、社員さんだけのものでもない。その会社は、今まで買って頂いた多くのお客様のものでもあるという事です。

例えばソニーのブランドはソニーだけのブランドではなく、購入者のブランドでもあるのです。
そういう意味からいえば、私でなくても誰かが引き受けなければならない訳です。
オムコ社から見れば、私は孫代理店のようなものです。その孫代理店が親会社を引き受けるのは、少し様子を見てからした方が良いと思いましたが、オムコ社の他の代理店の社長らも来られ、「是非、湯川社長にお願いしたい」と懇願されました。

10月は猪木さんの要望から新日本プロレスの役員人事等、引き受けた仕事は責任を持ってこなさなければならず、藤波社長就任パーティーの準備や新コマーシャル発表会の準備もあり、当然その中で、日頃のセミナーで全国を走り回っている状況でした。
だから「オムコ社引き受け」の話は、途切れ途切れになったままで、10月が過ぎました。

当時の話では負債60億円、社員160名との事で、経営陣は兄の会長と弟が社長の親族経営でした。会長はアルカリイオン整水器協議会の代表幹事であり、アルカリイオン整水器業界においては2社間には経験や実績においては大きな開きがありました。

さぁ、どうするか。私は悩みました。

(次回に続く)

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp