代表取締役 湯川 剛

07年3月26日、臨時役員会で新社長が誕生しました。
2日後の28日の決算説明会で、溝端新社長と私の会長就任を発表する為にも役員会の承認が必要でした。前期の実績が悪い為、当然ながら新社長ではなく私自身が説明する事にしました。

説明会に挑むギリギリまで私は会場の控室で「どのように説明しようか」と迷っていました。
迷っていたのは業績に関してではなく、説明する際の私の印象についてです。
私は常に声は大きく、明るく話すタイプです。しかし今回の決算説明会は、前期の実績が悪い。そんな時に従来通りの態度で行なうと「問題を深刻に捉えていないのではないか」「反省していないのではないか」とアナリストはじめ参加の皆さんが受け取るかもしれない。
では神妙な顔をし、声も抑え気味にすると「相当悪いのか」「いつも元気なあの湯川さんが落ち込んでいる」と受け取られかねず、「さてどうしたものか」と迷っていました。方向を決められないまま、司会者から「時間です」と促され会場に入場しました。

迷った挙句、結局はいつも通り、実績とは裏腹に明るく話す自分がいました。
通常、60分の説明会では前半30分間で決算状況報告を行ない、残りの30分は質疑応答というのが大体の流れです。
ところがこの時は20分位で状況報告が終わり、残り40分が質疑応答に当てられました。
「どなたか質問はありませんか」と司会者が参加者に呼びかけましたが誰一人として挙手する人はいません。「時間は十分あります」と司会者が重ねて参加者へ質問を促しました。従来なら、質問時間がオーバータイムになるのですが、この時ばかりは全く質問が発生せず、といって席を立つ人もいませんでした。演台に立っている私は内心「やっぱり反省していないと思っているのかな。気持ちは反省でいっぱいなのに」など参加者を見回しながら、でも落ち込んだ顔ではありませんでした。結局、決算説明会は30分程度で終わってしまいました。

決算説明会を行なう前まで、非難轟々の質問攻めの状況を予想していたので、新社長を矢面に立たせてはいけないと思い、打たれ強い私自身が説明すると挑んだのですが、結果的に肩透かしを食らったような感じです。
厳しい業績だったとはいえ、あちらこちらから質問攻めに合うのはけして心地のよいものではありませんが、誰一人として質問がないのも何となく気まずい思いでした。
決算説明会は最後に、新社長の紹介と私の会長就任を改めて報告して終わりました。

説明会終了後に毎回、初参加のアナリスト方々が挨拶に来られ名刺交換しますが、この時は顔馴染みのアナリストの方々も挨拶に来られました。
「今日は湯川さんの顔を見に来ました」「業績が悪い中で湯川さんはどんな説明をするのか、興味がありました」と言われたので、私は笑いながら「こんな顔をしていますが、腹の中は反省がいっぱいです」というと「分かっています」「良いも悪いも湯川節で良かった」「会長になったんですね」「いつもの湯川さんで良かった」との声を頂きました。

説明会前に迷っていたのは何だったのか。これからも実績が良い時も悪い時も、自分自身のありのままで説明するべきだと思いましたが、世代交代をした今、次回の決算説明会は恐らく新社長が行なう事になる訳です。
ということは、この日が私の最後の決算説明会になったという事です。


(次回に続く)

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