代表取締役 湯川 剛

07年2月1日、22時。6人の役員が集まりました。
翌日は毎月第1金曜日に開催される定例役員会議があるにも関わらず、召集された訳です。

私は役員らに次のような事を話しました。
「昨年は厳しかった。新年度を迎え、気分一新、改めて頑張ろう」
ここまでは例年の挨拶であったと思います。それなら翌日の定例会議でやればいい訳です。
続いて私は「先月の15日で60歳になった。96年のハワイ宣言を覚えているか」と問うと役員全員がうなずき、覚えているとの事でした。
その後は次のような話でした。
ハワイ宣言を実行するなら、60歳で私は社長職を辞める約束は守らなければならない。
しかし状況が厳しい中でバトンタッチする訳にはいかない、と元旦に仏壇の前で何時間も悩んだ事をそのまま役員らに伝えました。

ここから以降の文章は私の胸の内の話で、その時の役員には伝えていません。
11年過ぎた今、明らかにする話です。
私はあの時、仏壇の前で何時間も悩んだ事は、約束を守り辞めるべきか、それとも厳しい状況を脱却するためにこのまま続行するかとの事でしたが、ふと気付いた事がありました。
それは私が社長でいる事自体が問題ではないのかという疑問です。
「60歳で社長を交代する」と全社員さんに伝えた約束を守るべきという考えと、いやこの厳しい中でバトンタッチするのは間違いだ。その堂々巡りで悩んでいたが、実はそういう問題ではないのではないかと、全く違った考えに気付いたのです。
それは私が37年間、トップの座にいる事が問題ではないのかという結論です。

いろいろな人の意見や書籍から学ぶ中で、如何にトップの引き際が難しいかという事がありました。49歳で発言した「60歳で社長交代」は、その時だから言えたかもしれません。
しかし現実にその時が近づくと、それを実行しないトップも数多く見てきました。しかも何らかの理由をつけて正当化し、実行しないのが実情ではないかと思った訳です。もしかすると私の場合もそうだったかもしれません。厳しい状況の中でバトンタッチする訳にはいかないとか。でも今後も含めて、ビジネス社会において厳しい状況がない時は永遠にないのです。
私の正直な気持ちとして、バトンタッチするには余りも厳しすぎる事に申し訳ない気持ちは心底ありました。でもそれ以上に、私が社長の座に座り続ける事が本当にOSGにとって良いのか。文字通り、気分一新するには「社長交代」以外はないとその時、決断しました。
「社長を交代して下さい」とは私が余程重大なミスを犯さない限り、私に伝える人はいません。私の首に鈴をつけに来る人等はいないのです。自分でいうのも何ですが、私は私の全ての時間を犠牲にして、OSGの企業理念の実現に少しでも近づけたい一心で、ひたすら365日走ってきました。そんな私に、一期の結果が悪かったとして「社長、交代して下さい」とはなかなか言えないものです。しかも病床に伏している訳でもありません。
周りの人達が「社長交代」を気がついていても私自身がそれに気がつかない限り実現しないのです。私が自ら私の首に鈴をつけるしか、この実現はないのです。

勿論、このような話はその時も役員の皆さんには伝えませんでした。私の胸の中での話しを11年後の本日、この「人生はプラス思考で歩きましょう!」で真実を伝えています。

役員達には、難しく考えなくてもいい。「約束の60歳社長交代」と考えてくれればいい。
但し、こういう厳しい状況でバトンタッチする事を心苦しく思っている事も伝えました。
彼らは黙って聞いていました。

そして私は次のような事を彼らに伝えました。


(次回に続く)

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