代表取締役 湯川 剛

年が明けてW社が、従来の価格より更に安い価格の製品を発表するとの情報が入ってきました。当時5800円の浄水器を、なんと3000円台の価格で拡販しようとの事でした。販売先の関係からか、京都新聞に全面広告を掲載するという事で勿論、私達には関係のない話でしたが正直、気分的にはいいものではありませんでした。なにせ我々は、この1月から商品がストップされているのです。如何に経費を抑え、次の一手を考えなければならない時でした。そんな時に従来よりも安い価格で、しかも地方紙とはいえ全面広告を掲載するという事は、かなりな動揺を与えるものです。

にも関わらず、私はとんでもない事をしました。広告掲載当日のその朝刊に、「W社浄水器2000円」の折込チラシを入れたのです。その朝すぐに、私と親しいW社の幹部から電話がありました。「何を考えているのだ。現実に商品はあるのか。」との怒りの剣幕で問われ、5台の在庫がある事を告げました。内心、何十件もの問い合わせがあったらどうしようと思っていましたが、結論的にはお客様からの問合せ電話は、1件もありませんでした。今ならこんなバカな事は恥ずかしくて出来ませんが、若さだったのでしょう。当然、大きな出費がかかりました。何の価値もない意地だけの出費に終わりました。

ところがこの私の行為が、W社のK社長にとって大変なショックであったらしいです。毎回の会議に私の事を話題に挙げては、「君らも湯川君のように積極的に行動しなければいけない」と幹部らを叱咤していたらしく「ならば何も湯川を切る必要はなかったのに」と、ある幹部は復帰運動までしてくれ、取引の再開話が浮上。しかし私は「次のところが決まっているから、結構だ」と断ってしまったのです。「次のところ」など1社たりともある訳ではないのにです。残りの5台もすぐさま消え、どうすればいいのかと思案巡らす日々。社員を辞めさせる訳にもいかず、と言って売るべき製品がある訳でもありません。ただ、財産としてはこの1年間販売していたお客様が、数百軒あるというだけです。カートリッジの交換も当時は6ヶ月に1度でしたので、1月と7月に売ったお客様分を交換しなければなりませんでしたが、取引再開の誘いも断ってしまった為に、カートリッジの納品も切られました。

(次回に続く)

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