代表取締役 湯川 剛


高山支社長からの「アクアCはOSGを切ります」という電話の内容が頭から離れない状況の中、私は高山支社長と同じ会社である中田支店長から指定された店に向かいました。

「OSGを切る」という事は、アクアCは首都圏加盟店をどうするつもりなのだろう。
一緒に本部運営をやるという約束を反故にし、首都圏加盟店だけをやらせるのか。
それともその加盟店も切り離すのか。
もし加盟店も切り離すのであれば、多額な費用を払ってまで得た意味はあるのだろうか。
アタックに移籍させないよう、是非OSGが首都圏加盟店を引き継いで欲しいといったあの話は、いったい何だったのか。首都圏加盟店だけはアクアCの一員として継続してほしいのか。
いずれにしろ、アクアCとしての正式な見解が相手側から示されるだろうと思い、全くふざけた話だと、電話で高山支社長の話を聞いている間は終始冷静に対応していた私でしたが、こうして改めて考えている内に何か心に火がついたような気持ちになりました。

どうせアクアCと長くやる気持ちがないなら、アクアCの中田支店長に会う必要もない。
同じブランドで仕事をすると思うからこそ彼らとの付き合いに時間を費やすのであって、こうなれば彼らの不満を聞くようなお人好しになる必要などない。
指定された店に行く道すがら、いろんな思いが交錯し引き返そうかとも思いましたが、高山支社長の電話は彼らには関係のない話だから会うだけ会ってみようと気持ちを切り替えました。

店に到着すると、中田支店長の他に6名がテーブルを囲んでいました。一同は私を見ると一斉に立ち上がり挨拶をしました。その内1名は4月末に会った開発部長でした。
多くても3~4名だと思っていたので「なに?こんなにお揃いで」と中田支店長に促すと「開発部長はご存知ですね」といい、次々と他の顔ぶれを紹介してくれました。
彼らは全て現在アクアCの幹部であり、旧アクアCジャパンの幹部だった人物です。
プラント等の建築を担当する責任者、直営販売・開発そして加盟店管理をする責任者、更にアクアC全ての事業を統括する統括責任者達でした。この7名のメンバーこそがアクアCを動かしているのでしょう。

皮肉な事にわずか1時間ほど前に「アクアCはOSGを切る」と言われ、そのアクアCの中核メンバー達が私に会いたいとはどういう巡り合わせなのか。
私は1時間前の出来事は伏せて「こんなアクアCのお偉い方が集まって、私に相談しても私はご存知のように水宅配事業においては全くの素人です。皆さん方は日本の水宅配事業の中において、ベテラン中のベテランではないですか。むしろ私の方こそ皆さん方に教えて貰いたい事が沢山あります」
初顔合わせながら、さすが営業出身者達だけに和やかな雰囲気の中、会話が弾みました。
お酒を頼み、注文した料理が運ばれ、何の会合なのかは別にして食事会が始まりました。

彼らは予想通り、アクアCの不満を口にしました。
旧アクアCジャパンメンバー達はアクアC社内で、かなり辛辣な批判を受けているらしく
「その仕事の仕方はなんだ。だから旧アクアCジャパンはつぶれるんだ」というのが常套句との事。私は心の中でそれは仕方のない事だろうと思いながら、彼らの話を聞いていました。
「それはそうと本日の私との会合の目的は何なのですか?」と問うと、彼らは
「湯川社長、管財人から聞いた話ですが、旧アクアCジャパンの倒産後、OSGも入札に参加されたとの事ですが本当ですか」と視線を私に向けました。
私は、入札をした経緯も含めて話しました。

「湯川社長、OSGで水宅配を立ち上げて下さい。私達がいれば、事業はすぐにでも出来ます。プラントから販売、更に加盟店募集から教育まで、このメンバーがいればいつでも出来ます。最初は我々だけですが、規模が大きくなればメンバーは増やせます。湯川社長、OSGで新しい水宅配事業を立ち上げて下さい」
ここに集まった30代から50代の彼らは、日本市場においてベンチャービジネスである水宅配事業においては経験豊かな人材です。彼らの言う通り、このメンバーが揃っていれば、いつでも出来るという事は過言ではないでしょう。何しろ水宅配事業の失敗も経験しているのです。
そういう意味では彼らの提案は、私にとって大きな魅力でした。しかし、それによって伴ういろいろな懸念が頭を過ぎりました。
彼らを異動させれば、アクアCにとって大きな痛手になるのではないか。アクアCに痛手を与えるようなやり方は、自分の性分に合わない。
しかし毎日、嫌味を言われながら働いている彼らが居なくなる事は、むしろアクアCにとっては幸運な事なのか。アクアCにとっても良い状況になるのなら堂々と仕事が出来る。
私は彼らと食事をしながら、どう判断して良いのかを探っていました。

それにしても「アクアCはOSGを切る」という情報を得た1時間後に、旧アクアCで新生アクアCの幹部達から「私達と一緒にやりませんか」と提案される。

2005年6月28日(火)は私にとって、何と言う日なんだろう。

※ふと、今年のカレンダーを見ると、2016年6月28日も同じく火曜日でした。

(次回に続く)

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp