代表取締役 湯川 剛

クリスマス間近でした。W社の幹部でもあるK社長の弟さんの結婚話やボーナス等で大阪支店は、いつもよりも華やいでいたような気がします。そんな雰囲気のオフィスの中で大阪支店長から話があると言われました。てっきり結婚式の招待や、もしかすればボーナスを貰うことのない私に頑張ったご褒美として、金一封でも出るのかなという期待で面談に挑みました。

心なしか厳しい顔をしている支店長が、開口一番「湯川君との取引は年内までで、来年は中止です」との事です。「えっ!」支店長の話を理解するのに、かなりの時間を要しました。「どうしてですか?」の問いに、「本社のK社長からの命令」だというのです。そんなバカな事はない・・・9月の社員総会の事やその夜の2人の意気投合した状況から、どうしてそんな話が生まれるのか。しかもこの2ヶ月間、死に物狂いで社員の増員と浄水器の販売に大きな貢献をしてきた自分には考えられない言葉でした。当然の事ながら、支店長に喰ってかかりました。

「自分は何か悪い事をしたのですか。支店長もご存知の通り『1000日の約』以降、必死に頑張って来た。社員も増えた。売上げも増えた。どうしてですか」。支店長の言葉に耳を疑ったのは、「K社長曰く、湯川は必ず我社から独立する筈だ」との事が理由だと、伝えられました。

「誰が独立するんですか。私は既に独立している。意味が分からない」と言ったのですが、支店長は「自分にはどうする事も出来ない」と言うだけで、私の気持ちをK社長に伝えるとさえも言ってくれませんでした。目の前が真っ暗になりました。商品の供給が止められるという事は、収入が入ってこないだけでなく、集まってくれた社員さんとの苦労も全て水の泡になるという事です。あの社員総会の夜の話は何だったのか。自分の何に落ち度があったのか知らないが、ここまでの状況に追い込まれるような事は考えられない事でした。支店長の「社員を預かってもいいぞ」の言葉も無視して、部屋に戻りました。あと数日で新年を迎えるというのに、何という事だと一気に腹立だしさと不安が私を襲いました。

この事態を知ったW社の一部の幹部が私の部屋へ来て、驚くような事を教えてくれました。
「湯川君は力をつけ過ぎた。実はK社長も、ある会社で浄水器の代理店をしていたが、そこで大きな注文を受けた。それをそのメーカーに伝えず、自分で作ってしまったのだ。」と。
すなわち人間は「自分のやった事は他人もやる」という心理が動くという事なのです。私にはW社の製品を業界ナンバーワンにする為に頑張ろうという気持ちがあるのに、どうして他の商品を売ろうとするのか、そんな発想すらありませんでした。それだけにただただ愕然とするだけでした。その幹部が「社員が多くなったので、前のビルに移る」と言った事が、影響しているのではないかとアドバイスされました。

あと数日で新しい年を迎える中で、出会った社員と共にどう過ごすのか。社長としての決断が迫られたものです。2度目の冬も厳しい冬のように思われましたが・・・。

(次回に続く)

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