代表取締役 湯川 剛

決して2004年は中国の仕事ばかりをしていた訳ではありません。基本的に中国滞在ビザが15日間なので残りの15日間は日本国内で仕事をしている事になります。

11月5日、この日は投資会社F氏との朝食会の日でした。
F氏の事はこの「人生はプラス思考で歩きましょう!」でも時々登場します。
当時はカリスマ・ファンドマネージャーと呼ばれ、その彼が独立した事をきっかけに、私自身がF氏に「顧客第1号になる」と申し出た話は以前にも掲載したと思います。
朝食会はほぼ月1回のペースで情報交換を目的に行なっていました。殆どが大阪のホテルで、この日は大阪リッツ・カールトンでした。
私はF氏に「実は昨日、日本の水宅配の先駆者であるAジャパン社が倒産しました。たぶん民事再生により管財人が入って再建に向けて動き出すと思います。この機会にOSGは水宅配ビジネスに積極的に取り組みたく、Aジャパン社の再建に対し入札参加したいのです。理由はAジャパン社の宅配先ユーザーに対する不安解消です。それにOSGが挙手する事で第2・第3の企業が入札に参加されたなら、使っておられるお客様は安心されると思うのです。」
そんな風に話を切り出しました。

私は2002年2月に宣言した「国境を越えない企業は生き残れない。よって積極的にグローバル化を目指す」と「家庭用浄水器・アルカリイオン整水器の製造・販売から事業領域を拡大する」という第5次4カ年計画に沿って水宅配市場への参入も以前から視野に入っていました。

「是非ともやるべきです。むしろ私も積極的にこの水宅配ビジネスに協力したい」
F氏も今後の日本経済やそれに伴う生活模様の変化等を踏まえ、私の意向に理解を示しました。
翌日、緊急幹部会議を開催。買収に手を挙げる意向を伝えました。目的は2つ。1つは現在Aジャパン社で使用されているお客様に対する不安解消、そして2つ目に事業領域拡大の為の水宅配業界への参入である事を説明し、すぐに市場調査に動くよう幹部達に指示。同時に証券会社にも情報収集を依頼したところ、証券会社もまた関心を示し早速、証券会社系M&Aの担当者も決めました。
11月5日の食事会からわずか1週間の間にF氏と証券会社系M&A担当者らを交えて5回、会議を実施している記録が残っています。それ程、この水宅配ビジネスに各方面が魅力を感じたのでしょう。ちなみにAジャパン社は上場を準備し、主幹事会社も決まっていたという話です。それだけに各関係者も食指が動いたのでしょう。

翌日から色々な情報が入ってきました。中には既にOSGの販売店様でも水宅配を取扱っているところがあるという報告をあちこちから受けました。
そういえば、私共の大取引先であるプロパン業界の最大手I産業の関連会社がこの水宅配業界に数年前から取扱っており、相談を受けた事がありましたが私はその事をすっかり忘れていました。「ガスと水」というテーマはOSGが1990年より企画・立案し、都市ガスやLPガスと組んで全国的に広めていました。その流れがI産業の関連会社での採用を後押ししたと聞いていました。まさに灯台下暗しで身近なところでこの水宅配ビジネスが誕生していた訳です。

私は以前、プロ野球OBで構成するマスターズリーグで大阪エリアを2年程知人依頼でオーナーになっていた話は既に掲載したと思います。その関係で九州エリアのオーナーで水宅配Aジャパン社の代理店をしている事を思い出し、そのS商事の社長に連絡をしました。以前、プラント見学させて頂いた関係から率直に今回の倒産について質問をしました。

すると「Aジャパン社は上場するという触れ込みだったので加盟店になったがこんな状況に驚いている。実際、加盟後に色々な事が見えてきて、上場よりまだまだやるべき課題があるのではないかと、Aジャパン社社長に進言もした。何より当初の説明と違い、エリア管理等されていない。わずか数百メートル範囲に複数の加盟店が乱立状態で、多くの加盟店が不満を抱えている」等、ネガティブ情報ばかりでした。
そこで私が「現在、ご使用されているお客様に対してどんな変化がありますか」と質問すると「S商事にはプラントがあるので、水の供給は当面問題ありません。むしろお客様が増えていますよ」との事。私はこの一言で「水宅配ビジネスは成長する」と確信しました。

(次回に続く)

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