代表取締役 湯川 剛

T社三愛を設立する事で記念として新製品を誕生させたいという話しが、T社より03年末の両社間の会議で出ていました。

翌年、金菫事長から「早く出すように」と要望がありましたが、設計や金型及びデザイン等、1年以上かかるものなので無理だと意見を伝えましたが、どういう訳か、当時新製品のデザインや金型が出来上がっていた事をT社側が把握して、春までにと強い要望がありました。
それはたぶん、前回掲載した通りオリンピック選手に渡すスケジュールがあったのでしょう。
いずれにしろ、市場テストもせず無謀だと思う事も「中国スタイル」と妙に納得したのです。
当初、新製品を出すには検証も十二分ではなく無理だという生産工場側の意見が圧倒的でしたが、金菫事長の「どうしても北京で開催する世界機能水研究会の後のメディア発表の場で、オリンピック選手に贈呈したい」「新製品をオリンピック選手が使っている。これは凄い宣伝力になるのだ」「オリンピック選手が集まって協力するタイミングは6月しかない」という意見には誰も反論できませんでした。
オリンピック選手に贈呈するのであれば、実績のある従来の製品(HU-50)にすればどうかとの意見でしたが、やはり新製品にこだわっていました。

生産工場側の不安が的中しました。
市場に出す前とはいえ、T社三愛の新製品はつまずきました。
贈呈セレモニーから2ヶ月が経った8月頃に取り付けました。ところがそれから1ヶ月も経たない内に、次々と不具合の連絡が中国国家体育局からT社に連絡が来ました。
「やっぱり」と生産工場側の者は、こういう事態になる事を予測していました。なんと選手に贈呈した半分が不具合になっていました。不具合の内容は殆ど、水漏れでした。
こうなるとT社は当時、自らが製造を急かした事などすっかり忘れ「T社三愛はどうなっているのだ。不具合だらけじゃないか」「これなら中国メーカーと同じではないか」との抗議が、怒りと共に寄せられました。
選手に贈呈する製品は一部、有力代理店にも先行してT社が渡していたらしく、販売の現場からも不具合のクレームが来ました。ちなみに従来通りの製品を販売している代理店からは当然の事ながら、何のクレームもありません。

「だから慌てて新製品を出すのは断った筈だ」と生産工場側は言ったとしても、それで納得する事ではありません。選手の間での不具合は問題ですが、根本的に販売に影響する事はあまりありません。むしろ有力代理店のクレームには他の代理店に大きな影響を与えました。

いずれにしろ、半分以上の不具合が発生した選手には従来の製品と取り替えました。
また有力代理店が既に販売しているお客様には、従来の製品と取り替える事で問題解決としましたが、お客様は従来の取り替えた製品を見て「これの方がいいじゃない」と評価をして頂きました。というのは、そのお客様達はかなり裕福なお客様で「体にいい水なら高額でも買う」という事で、当初は中国メーカーを購入していたのですが、数社の製品が全て不具合で諦めていたところ、HU-50と出会ったのです。
このお客様達が数ヶ月を経ても何の不具合も発生しない事の評価が声となって「OSGのHU-50はアルカリイオン整水器の名器だ」となり、それが業界全体にまで広がったのです。

新製品が中国市場に本格的に出る前に不具合が発生し、それによりむしろHU-50が逆に評価され、皮肉な事に業界全体において今日まで名器だと言われる事になりました。
勿論、副作用はあります。合弁記念新製品はそれから数ヵ月後、マイナーチェンジ等を行い、市場テストを行なって十二分に新製品として発売できるにも関わらず、当時の事件(?)から代理店は「新製品はいらないからHU-50が欲しい」と言われています。

 

追記

04年5月に設立されたT社三愛は、昨年の5月で10周年を迎える事になりました。
その間に合併記念新製品も含めて、3品程の中国向け新製品を発売する事になりましたが、中国代理店は結局、一番最初に中国に入った「HU-50」を現在も主力商品として取扱って頂いています。

尚、中国で生産されている製品は中国国内のみで販売され、日本では販売していません。
また日本で販売している製品は、全て日本で生産され中国で生産されているものはありません。

(次回に続く)

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