代表取締役 湯川 剛

青島会議で私は金菫事長にロイヤリティー問題で大幅に譲歩して貰いました。
「今回の件で金兄弟に借りが出来ました。いつか返します」と約束した数ヵ月後、T社に問題が発生しました。

それはT社に中国国税庁が入り、関連会社としてT社三愛も調査の対象となった時の事です。
一部始終を記す訳にはいきませんが、大まかな話をすると利益操作を行なったのではないかと疑われたのです。(わかり易くする為に金額は仮の金額とし、単位も元でなく円単位で説明します)
国税庁の指摘は「T社三愛がT社に1万円で納品。しかしT社三愛の製造原価は1万500円なのでT社三愛は500円の赤字。本来であれば、T社三愛は本来そこに利益を上乗せし、1万2000円で納品してもいい筈。それが1万円であるという事は1500円の利益操作だ」
確かに国税庁の指摘はもっともな事です。

しかし私はT社に対し「1万円で納品する」と約束。この約束は守らなければなりません。
現在、仮に1万500円の原価がかかっているが、設立当時にはこのような現象が起こり得る事がある。まして取引実績の少ない中国では仕方がない状況です。勿論、我々も損をする気持ちはないが、残念ながら1万500円もかかってしまった。
しかし約束は守らなくてはいけない。それが私の主張でした。
国税庁は終始一貫、それでも利益操作をしていると、一歩も譲らず。国税庁と交渉しているT社三愛の財務担当は中国の女性がしていたのですが、なかなか前に進みません。そこで私自身が国税庁に出向くと言ったところ、財務担当者が「悪くすれば捕まるかもしれないので、行かないでほしい」と必死に止めました。
そこで私は「日本人の私が中国人との約束を守らないで、これからどうして中国で仕事をやっていけるのだ。それで捕まったらそれもいい」と言った為、困った財務担当の彼女はT社に泣きつき、状況を説明しました。

T社は「T社三愛の調査でなく本来は自社の調査なのでこれ以上、国税庁と揉めてはいけない」と、値上げはやむを得ないとして、矛先を収めました。国税庁も従来の価格は修正せず、これ以降は利益操作をしていると誤解される事のないようにと、この調査は終了しました。

この事件でT社幹部は「湯川は凄い。自分の事も顧みず、国税庁と闘ってまで我社の事を思ってくれた。湯川は男同士の約束を守る男」と評価して頂きました。
金菫事長は「実質的にT社三愛が赤字生産で、ある期間、利益率を良くした事には感謝する」と言ってくれた事に対し、私は「青島会議で金菫事長がロイヤリティーに理解を示して下さったお礼です」と応えました。

「売るだけ、買うだけの関係では味気ない。取引を通じ、互いに共感出来る要素を共有したい」
とはこういう事だと改めて感じました。

(次回に続く)

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