代表取締役 湯川 剛

02年の1月へ少し時間を遡ります。
この当時の事は第226回でも触れていますが、かなり要約された形の掲載ですので、それに至る経緯をもう少し詳しく説明したいと思います。

02年1月、当時OSGの売上は家庭用浄水器・アルカリイオン整水器の販売及びメンテナンス業務がその殆どを占め、殺菌水ビジネスは今後の育成ビジネスという位置づけでした。
この家庭用浄水器・アルカリイオン整水器の販売及びメンテナンス業務がジャスダック上場に貢献した事は言うまでもありません。
上場後初の決算での売上は46億2400万円、経常利益7億3600万円。
OSGより1年先にジャスダックへ上場した同業他社は、2000年3月の売上45億7300万円、経常利益6億9300万円で弊社とよく似た売上及び収益規模でした。

私はここで悩みました。この同業他社の後姿を追いかけて経営をしていくのか、それとも全く違った方向で経営していくのか・・・。
同業他社は家庭用アルカリイオン整水器及びメンテナンス業務で将来の絵を描こうとしている事は上場後の経営で明確です。この方向も正しい経営判断だと思います。

結論から言えば、私は別の道を歩む事を決心しました。
理由は、一つのカゴに盛られた卵は、そのカゴを落としてしまった場合、全部の卵が割れてしまう事が容易に考えられるからです。複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、万が一カゴを落としてしまったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということです。
この単純な「卵分散論」に従っていこうと決断しました。
しかしこれには大変な勇気が必要でした。もしかすれば上場後初の売上46億円・経常利益7億円の基礎的なものをぶち壊してしまう可能性があるからです。従来通りでいけば売上・経常利益は上乗せしていけばいい訳です。ちなみに同業他社の02年3月の売上は64億円、経常利益は14億円と確かな上積みをしている事が、私を少なからず悩ませました。

目の前の売上を構築していくのか、それとも10年先・20年先の姿を信じて今までの売上を一旦、破壊するのか。重大な決断でした。しかも証券市場は目の前の数字で株価等が評価されます。この不安材料を克服する事が出来るのか。また有り余る人材がいる訳でもなく、収益を上げている事業からの人材を新しい事業へ投入する事への不安も正直ありました。

そしてその一方で、家庭用浄水器・アルカリイオン整水器の販売及びメンテナンス業務の事業だけでは生き残れないのではないかという将来的懸念もありました。事業領域を広げる必要があると感じていたのです。
少子高齢化の日本市場において、消費縮小が見込まれる状況下、国境を越えない企業は生き残れない。その為には積極的な海外進出を図るべきだ。
悩みに悩んだ末に「よし、これしかない」と決断しました。

この2大目的を旗印に、第5次4カ年計画(2002年2月〜2006年1月)を社内で発表。

しかしそのように発表しても悩みは続きました。
1つのカゴに卵を盛ってはいけないという格言を信じていくのですが、思うは易しく行ないはその何十倍もの困難があるものです。
例えば、海外進出と一言でいってもどうすればいいのか、その時点では分かりません。
また事業の領域を広げるといってもそれは何から手をつければ良いのか。新事業が成功する保証などないと心が揺れて、やはり確かな売上を確保出来る家庭用浄水器・アルカリイオン整水器の販売やメンテナンス業務だけの事業拡大に力を入れておく路線の方が正しいのではないか。一度は決断したものの苦悩の種は尽きませんでした。
経営者としてのこの決断は、その後のOSGの闘いとその苦悩の始まりでした。

しかしこれらの方向に向かおうとした時、その歩調に合わせるように次から次とそれらを導くような出会いや出来事が生じるシンクロニシティ現象も起こるのでした。
では、シンクロニシティ現象とは・・・。

(次回に続く)

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