代表取締役 湯川 剛

小学校の校舎と井戸を寄贈した村ではパレードが始まりました。
「こんな大層な事をされると困る」と、同行のアジア協会アジア友の会の専務理事に言うと、
「今更、中止する事は出来ませんよ。」と言われ、専務理事は言葉を続けました。
「湯川さん。井戸が出来たおかげで片道4時間もかけてお水を汲みに行く子供達は開放されたのです。1日を水汲みだけでその日が終わる子供達に学校に行ける時間を与えたという喜びの表れです。」
寄贈しようと思っていた自分の気持ち以上に村の方々の喜びの方が大きいのだと、この時初めて知らされました。私は気恥ずかしい気持ちを抱えながら、寄贈セレモニーに参加しました。

仮設舞台が設けられ、地元の政治家らしい方々や日本の領事館の方々も参加されてセレモニーは行なわれました。言葉は分かりませんが、カンボジア語で話されたスピーカーがこちらを見て笑顔で頭を下げられたので、私も思わず立ち上がり最敬礼しました。
セレモニーの後、いよいよ子供達との出会いです。

日本から準備したお土産は、子供達にはノートや鉛筆、中でもサッカーボールは一番人気。先生方には石鹸とタオルが喜ばれたようです。しかし他の何よりも注目されたのは、この日の為に練習した私の下手な手品でした。
教室を一部屋ずつ訪問してお土産を渡し、最後に手品を披露する。この手品が大変好評でした。お土産を渡し手品を披露し終えると次の教室に移動して、同様にお土産を渡して手品を披露する。すると先に訪問した教室で、既に手品を見た子供達が次の教室での手品を見る為に教室の廊下側の窓から覗き込む訳です。最後の教室になると私の予想を遥かに超える盛況ぶりで、廊下には人が溢れ、危険な状況にもなりました。
「子供達は湯川さんを魔法使いだと思っていますよ」
ボランティアの方の話では、発展途上国において手品は魔法使いのようなイメージがあるそうです。
株式公開をしたおかげで、学校や生活に欠かせない生命の水を供給する井戸が出来た事は、私に大きな喜びを与えてくれました。

実は株式公開を目指す経営者の集まる勉強会があり、私もその勉強会のメンバーでした。そこで知り合った経営者の方々の中には、株式公開で得た利益で別荘を買った、クルーザーを買った、大きく家を建て替えた等、いろいろなお話も聞き、また勧められました。ところがクルーザーなど買われた経営者の方ほど、公開して数年も経たない内に持ち株を手放し、その企業にファンドが入り、辞任するところまで追い詰められたのも見てきました。

そういう意味において私に社会貢献活動を勧めて頂いた横井会長や、私に喜びを与えてくれたカンボジアの子供達には心から感謝をしたいと思います。

またこのカンボジアへの学校校舎寄贈が思わぬところで協力して頂いた事があります。
それは株主公開2年後、弊社のCMに誰を起用するかが話題になった際の話です。
広告代理店より、女優の紺野美沙子さんを起用してはどうかという提案を受けました。
紺野美沙子さんは1998年10月より国連開発計画(UNDP)親善大使として活動されているとの事で、是非とも話を進めて貰えるよう広告代理店に依頼しました。
ところが所属事務所から提示された出演料と弊社側の予算に大きな開きがあり、決定するに至らなかったのです。それもその筈、紺野さんは当時、味の素や近畿日本ツーリスト・シャープなど大手企業のCMに出演されていて、予算が違うのは当たり前でした。

そんな中、紺野さんご自身が弊社のホームページをご覧になったようで、あろう事か、弊社の予算内で納まる様、自ら所属事務所と出演料を掛け合って下さり、CM出演が決まりました。
紺野さんの話によれば、ボランティア活動で最初に訪問したのがカンボジアだったとの事。私達のカンボジアでの校舎建設や井戸の寄贈を知って共感して頂けたのでしょう。
この話を聞き、カンボジアへの寄付により多くの恩恵を頂いた気持ちになりました。
弊社は2003年から2014年まで11年間、紺野美沙子さんを起用させて頂くには、そのような背景があったのです。

改めて紺野美沙子さんにはお礼を申し上げたいと思います。

(次回に続く)

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