代表取締役 湯川 剛

2001年2月1日(木)。第32期がスタートしました。
前日は期末の終礼の為に夜遅くまでの勤務でしたが、明けて翌日の2月1日(木)はいつものように朝7時に出社しました。
期首を迎えて私は、手帳の2月表紙に次のような文言をマジックで大きく書き記しました。
「いよいよ第2ステージ突入(いざ、リングへ)」
「2Eカンパニーを目指そう」
「2E」とは、エクセレントカンパニー(優秀企業)とエキサイティングカンパニー(自己実現企業)の頭文字です。これらを目指す為の課題を考えました。そこで私は「4悪退治」と名付け、返品・回収・月末出荷・予実の差を限りなくゼロに近づける事を課題に掲げました。

7時30分、全国拠点長らを対象に電話会議が開始されました。
通勤時間が往復2時間以上かかるという管理職・拠点長達は、恐らく僅かな睡眠でこの早朝会議に参加したと思います。
そして翌日の第1金曜日は8時より月例の役員会が開催されました。
この時、既に役員達は誰も2日前までの第31期の事は何の関心もありませんでした。あれ程、「第31期は大事な年度だ」と話していたというのに、もう全役員の気持ちは第32期に向けられていました。「過ぎた事はどうでもいい」等とは思っていないのでしょうが、それよりも私が手帳に書いたように「いよいよ第2ステージ(いざ、リングへ)」という同じ気持ちが全役員にもあったのでしょう。こうして週末の土・日には、恒例の冬合宿が開催されました。
全役員と同様、合宿に参加する管理職らも第32期をどう進めるかに目が向けられていました。

この年の冬合宿には80名程の管理職らが本社に集結し、まさしく本社に寝泊まりで監査法人の課題に取り組みました。社内では『株式公開にむけての雰囲気』が充満していました。
誰一人、疲れた様子も見せる事なく、1つの目的に向かって取り組むという事は、これほどのエネルギーを発揮するのかと感心するくらいの雰囲気でした。電球を近づけたら発光するかと思う程のエネルギーが溢れていました。

同じ目的に向かって闘い、苦しみ、泣きそして笑う。
私はそういう仲間達を「戦友」と呼んでいます。
合宿の初日が終わり、それぞれ睡眠出来る場所をオフィスの中で確保し寝ました。私は夜中に起き、薄暗いオフィスの中をそっと歩きながら眠っている彼らを見ました。その姿はまさに野戦の最中、寝袋で睡眠をとる戦士達のようでした。何としてもこの闘いを無駄にしてはいけない。苦労の花は咲かさなければいけない。そう改めて強く思いました。
同時にふと、万が一にも株式公開が実現出来なかったとしたら、社員さん達の失意は如何程のものだろう。そんな思いがふと頭を過り、空恐ろしくなった事を覚えています。

万が一、実現できなかった場合でも立ち上がって再度挑戦してくれるだろうか。
失意のどん底から這い上がれないまま、この会社自体もおかしくなるのではないだろうか。
日頃から前向きでプラス思考を自負する私自身の中にも、一瞬、ネガティブな気持ちが入り込んできました。
それ程、今回の挑戦は自分自身だけではどうにもならない課題だったのだと思います。
こちら側の熱意や思いだけではままならぬ第三者機関が決める事だけに、今までに何度となく修羅場をくぐり抜けて来たつもりの私でさえ、プレッシャーを感じていました。

薄暗いオフィスで寝ている野戦の戦士達の姿を見つめながら、強気な私と僅かばかり弱気になる私が交差しました。

(次回に続く)

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