代表取締役 湯川 剛

そしてマラソン当日が来ました。社員さんから貰ったたくさんのお守りを携え、初のフルマラソン、42.195キロに挑みました。大会は早朝5時30分のスタートでしたが、私自身のスタートは11ヶ月前の「病気をしてツイているぞ」とホノルルマラソンに挑む決心をしたところから全ては始まっていました。もしもあの時「正月早々ツイていない」と思ったならば、今ホノルルで走っている自分はいない訳です。
「思い以上の行動は無く、行動以上の成果は無い」とはよく言ったものです。

当時、ホノルルマラソンは2万人弱の参加でした。みんな楽しそうに走っていましたが、私は真剣そのものでした。ただ一人黙々と走り、「思いがその人の人生を方向付けるのだ」「まずはその思いが大切なのだ」とこの時、改めて考えさせられました。
とはいえ、体力が消耗し、30キロあたりから脚が引きつって急に動かなくなりました。気持ちは走っているのですが、前を歩いている参加者との距離は一向に縮まらないのです。それ程、脚は動きませんでした。「もうダメだ」と弱気な気持ちに何度か襲われながら、それでも自分より年配の人が必死に前に進もうとしている姿に気持ちを奮い立たせ、必死に足を前へ運びました。何よりも自分が頑張らなければならないと思ったのは、伴走者を伴った目が不自由なランナーと出会った時です。
「何をしてるんだ!」と自分に鞭を打って、引きずる脚をとりあえず前へ前へと持って行きました。この時ほど自分の体力の限界と出会ったことはありません。
いよいよゴール間近。「おかえりなさい」と日本語で書かれた横断幕が目に飛び込んで来ました。それを見るなり、急に涙が流れてきました。

タイムは5時間53分でした。たった一人での参加は、喜び合う相手がいません。私はホテルに戻り、風呂場で缶ビールを開け、生まれて初めて自分の両脚に「ご苦労さん」と語りかけました。そしてこの時、一人でも多くの社員さんにこの感動を体験して貰おうと思ったのです。
1年後の「第2回OSGホノルルマラソン」には19名の社員さんが参加しました。
参加資格は、仕事の成果だけでなく小さな努力賞などもポイントで評価し、予め定められたポイント獲得数に達した社員さんが参加できるというもので、社員さん達は当社独自の「OSGパスポート」に上司の評価スタンプを貯めていき、その結果19名が選ばれました。

仲間と分かち合える完走打ち上げパーティーは、最高の時間でした。苦しみの中から得た満足程、歓喜はケタ違いです。もっと多くの社員さんに一人でも多くの社員さんに、この「苦しみの中から得られる感動」を体験して貰える、そんなOSG文化を創ろうと、それから今年まで1度も中止される事なく続けてきました。勿論、この23年の間に企業の実績が厳しい為に、わずか数名での参加の年もありましたが、それでも「ホノルルマラソン」は間違いなくOSGの文化になっています。マラソンで体感する「苦しくともやり切る事の尊さ」は、OSGの文化を具現化したものだと思っています。

ちなみに現在、OSGの社員さんはこのホノルルマラソン参加の経験から、各地の市民マラソンに参加し、中には100キロマラソン参加の猛者社員も出現しています。

追記
株式上場への準備が本格的になった1999年。超多忙の中、練習する時間も気持ちの余裕もありませんでした。その結果、私はこの10年間、レースに参加することを断念していました。しかし来年40周年を迎えるにあたり10年振りに参加しようと、昨年末より自分の年齢も忘れて練習に励んでいます。
ちなみに私が保持するベストタイムは5時間25分。年によっては8時間超のタイムでゴールする事もありましたが、しかし12年間社員さんと共に「完走」だけは守りました。

今年の参加もタイムは別として「完走する」事を目標としています。

(次回に続く)

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